長嶺 超輝 『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)
前から読みたいと思っていたベストセラー。軽ーく読める、法廷バラエティー的一冊。
裁判とは法に厳格で忠実でなければならない。国家が人に下す判決であるからして、私利私情による揺らぎや、文字通り裁判官の裁量による幅があってはいけない。裁判官が法廷で意見を述べる場合には「私はこう思う」ではなく、「裁判所はこう考えます」と言うのだ。
しかし裁判でも、裁判官の人としての(「血の通った」とよく言われるが、)本音が聞こえてくる場面が見られる。それは補充質問や、判決理由、説諭(正式な法律用語では「訓戒」)という機会である。タイトルには「爆笑」とあるが、心を突き動かす粋な一言あり、被告人を諭すクサイ説教あり、社会に投げられた普遍的なテーマあり、思わず漏らした痛切な本音あり。
中には適切でないとも言われるかもしれない、独善的な意見もある。が、裁判はただ機械的に捌いていって(片付けていって)いいものでなく、人の行った行為に対して社会を代表して声を届けるものであると思う。また閉じていた犯罪者の心と真摯に向き合い、開かせる機会であるかもしれない。だとするならば、こうした魂に訴えかけるような言葉をこれからも生んでいって欲しいと思うのだ。
さて、オレが特に心に響いたのは、「自殺サイト」で知り合った男性3人が集団自殺を図り、自らは生き残ってしまい自殺幇助の罪に問われた21歳の大学生に対しての、次のもの。
人間というものは、誰だって辛い思いをする。良いこともあれば悪いこともある。悪いときにはスポーツをするとか、気分転換を図るとか。君には生きていく知恵が欠けていたのかもしれないね。今ばかり思っても仕方がない。過去ばかり見ることは、もっと仕方がない。
パソコンの前にいたって、新しいものは出てこない。孤立する原因は人づきあいにある。この事件以後、心配してくれた周囲の人たちと、少しずつつながりを持って、心の弱さを克服してほしい。
(pp.202-203)
« 救出 | Main | 山ちゃんの手羽先 »
The comments to this entry are closed.
Comments