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August 04, 2007

中島 義道 「私の嫌いな10の言葉」(新潮文庫)

この本を手に取ったのは、今のオレにとってある種の必然性に引き寄せられたのかもしれない。大学の友人の一人が言っていることが、この本で著者が言っていることに重なって聞こえた。と言ってもこの本では、あくまでセンセーショナルで極端な書き方をしているから、全ての場合に当てはめて考えてしまうのは危険だと思うが。(もちろん極端な考え方や行動が危険なのは何事においても言えることだと思うが。)と、ここで極端な書き方と断定してしまうのは著者に対しての暴力だろうか。著者が日頃本心から怒っていることであるらしいから。

著者は自分で言っている通り、感受性においてのエゴイストでありマイノリティー。

私がエゴイストが割りと好きなのは、彼(女)は他人(マジョリティ)から憎まれ蔑まれ、何の利益も受けないから。いつもいつも他人(マジョリティ)から厭がられ損をしているから。それにもめげず、みずからの信条を曲げずに、この絶対的にそんな道を選んでいるから潔い。それに対して、「他人の気持ち愛好者」を嫌悪するのは、彼(女)の前に開けている道は、よく舗装された公認のラクな道だから。(pp.18-19)

恐ろしくなったのは、挙げられた言葉のうちのいくつかは自分が口にしたり、口にしないまでも、代わりに発した言葉を導き出す思考の根底に確かにあったものだったりしたからだ。「相手の気持ちを考えろよ!」「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」「ひとりで生きてるんじゃないからな!」・・・。

10の言葉に挙げられたそれはつまり、多くの日本人がよく考えもせずに、(というよりそれ以外の見方があるとは考えも及ばず)放ってしまいがちな言葉であろう。だからこそ逆説的に、それは画一的なものの考え方の押し付けという、暴力的行為であると指摘している。「おまえのために」言ってやるその相手より人間として絶対的に上位にいるという傲慢。そう言われてみると、よくもまあそんな恥ずかしいことを言えていたもんだと思わされる。

・・・・・・全部自分が好きでしたこと。子育ては、たいへんな苦労を伴なうものですが、(普通は)自分が好きでしているのです。そして、いかなる子育てであろうと、(普通は)もう充分それだけで子供から喜びを与えられている。だから、それ以上何も子供に期待してはならない。(p.68)

無論、子育てについてではないが、オレは言われたことがある。自分が好きでしたこと。自分がしたいからした。誰かのためじゃなく、自分のため。何も期待してはいけない。言われたその時は腑に落ちなかったが、今はそれも一つの真理かなと思う。期待をするから失望もする。「期待をしないでいること」はオレにはなかなか難しいのだけど、「期待通りに行かなくても失望しないこと」は自己防衛のためでもあり、相手を傷つけないためにも有効なことだ。オレがその友人に教えられたことの一つ。

この本には思い当たる節が多くて挙げていくとそれはきりが無いものになってしまう。反省するところもあれば、オレと同じ考えだ!と共感する部分もある。

たしかに、「胸に手をあててよく考えてみれば」わかることもままあります。しかし、それが相手の思惑と同一であるという保証はない。別のことがわかることもありうるのです。しかし、こう語る人はそれさえ認めない。「胸に手をあてて」自分の思惑とまったく同一の内容を探り当てなければいけないのですから、ほとんど過酷な要求を出している。(p.207)

結局のところ、著者の意見に賛同だ、とか、マジョリティーの意見が正しい、とかは、どうでもよくって。大事なのは自分とは違う多様な意見があることを認めること。他人(ひと)って自分とは驚くほど違う世界に住んでいるのだ。価値観、常識、ものの考え方、それらが相手と同じだなんていう幻想は捨てて、常に確認しながら対話しなければならない。自分もつい陥りがちなその思い込みに気をつけなくてはいけないが、相手にそれを気付かせるのもそれはそれは難しい。人付き合いがとてもうまくて、目下オレが生き方のお手本としているその友人にしたって、意見の違いでぶつかったり、食い違いでぶつかりそうになっている場面を見たりする。ほとんどの人が互いに争いたいなどと思っていないはずなのに、ぶつかってしまうことを苦々しく思う。


結局、他人は他人。自分のことを面倒見てやれるのは自分だけ。そう教えてくれたのも彼女。なぜこうも卓越した人生観を持っているのだろう。・・・・・・経験の違いかな。

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